2010.06.29 にいつの昔話を紹介します(その1)
前回「朗読発表会 にいつの昔話を読む」をレポートしましたが、その会で読まれた昔話のうち里山を題材にしたお話をご紹介します。
「病気を治したへそ清水」
むかし、金津にあったお話です。
菩提寺山の近くの村に、権九郎という親思いの男が住んでいました。権九郎はとても働き者で、朝早くから暗くなるまで、山で木を切 ったり、狩りをしたりして暮らしていました。
ある日のことです。いつものように、遅くまで仕事をして、家に帰ってみると、母親が、
「腹が痛い、腹が痛い。」
と言って、床の中で苦しんでいました。
「おっかあ、おっかあ・・・・・・・・・。」
権九郎が、心配してたずねましたが、ろくに返事もできないほどでした。
医者にみてもらおうにも、薬を買おうにも、こんな山深い村では、おいそれとは間に合いません。話を聞いて近所の人も見舞いに来てくれましたが、ただ、まくら元で、おろおろするばかりでした。
(この上は、ひごろ、信心している観音さまにお願いするしかない。)
と考えた権九郎は、
「観音さま、どうか私の体にかえても、おっかあの病気を治して下さい。」
と、一心に手を合わせて、お祈りしました。
四、五日たったある日のことです。連日の看病づかれのため、うとうとしていると、
「権九郎、権九郎。」
と、自分の名前を呼ぶ声が聞こえました。
(おや、誰だろう。)
と思って、顔を上げると、観音さまが立っておられました。
驚いていると、観音さまは、
「おまえの親孝行には感心した。母親の病気をなおしてあげよう。おまえが、いつも仕事をしている菩提寺山の中ふくに、大きな岩が ある。そこに、したたり落ちるわき水がある。それをくんできて飲ませるがよい。」
と言って、姿を消しました。
「あ、ありがとうございます。」
そう言う自分の声で、目を覚ました権九郎は、
(何だ、夢だったのか。)
と、一度はがっかりしました。しかし、
(いやいや、こ れこそ、いつもお祈りしている観音さまの、ありがたいお告げにちがいない。)
と考えました。
喜んだ権九郎は、夜の明けるのを待ちかね、いさんで山へ出かけました。
するとどうでしょう。山の中ふくにある岩のあたりにくると、どこからともなく、よい香りがしてきます。そして、
「ポチャン、ポチャン。」
という音も聞こえるではありませんか。
ただよう香りと、したたり落ちる水音をたよりに探してみると、岩のかげに、きれいなわき水がありました。
(これだ。観音さまのお告げのわき水とは。)
権九郎は、おどりあがって喜びました。
竹づつに、そのわき水をいっぱいくみ入れると、飛ぶようにして家に帰り、母親に飲ませました。すると、あんなに苦しがっていた腹の痛みが弱まり、床の上に起きあがれるようになりました。
日をおって、母親の病気はよくなり、二、三日もすると、すっかり元気になりました。
そのことがあってから、誰言うとなく、そのわき水を「へそ清水」と呼ぶようになったということです。
(「ものがたり にいつの昔話」昭和52年発行から)
投稿者 : akihaku | コメント(0) | トラックバック(0) |

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